「むかしむかし、ある国にジークフリートという王子がいました。父の王様はすでに亡くなっていて、母の王妃と山の上の城に住んでいました。城の回りにはひろい森が広がり、その向こうの山あいに黒い湖が鈍く光って見えました。うわさでは、その湖には美しい白烏たちが住んでいるということでした。ある日、ジークフリートは成人となる誕生日を迎えました・・・」
このお話は何の物語の始まりか,ピンと来ますでしょうか。
ジークフリートさんは,ワーグナーをはじめ,クラシックの古典にいたるところで登場する名前ですが,この物語は,チャイコフスキーの「白鳥の湖」の冒頭部分です。
悲恋というのは,どうしてこう心を打つのでしょう。この曲,「刻み」やアルペジオの連続が,果てしなく続く部分が多いのですが,演奏してみると,悲しい恋のやるせなさと重なって激しく心を揺さぶります。
曲はこうした曲だけではなくて,華やかな王宮の場面やコミカルな情景など,典雅で趣味のよいチャイコフスキーの感性が,いたるところにちりばめられた絵巻のような音楽の物語です。
今回,4月11日の171回定期演奏会では,こうした曲から10曲を選んでナレーションつきで演奏します。良く聴く組曲版とはちがった物語としての白鳥の湖をお楽しみいただけると思います。
川響の得意なレパートリー「交響曲第5番」も熱いです。 (DR)